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 温かな口腔の全てを蹂躙する。
葵がマリアの冷たさを心地よく感じるように、マリアも葵の温かさを快く思っていた。
キス自体初めてらしき葵の、とまどう舌を弄ぶ。
白い歯を舐め、桃色の歯茎を這い、舌の根本を犯した。
「あ……えぁ……はふ……ぅ……」
 初々しい喘ぎを吸い、咀嚼してたっぷりの唾液と一緒に返す。
何も知らない少女に快楽の奥深くを教えるのは、まださえずることしかできない雛鳥を、
いきなり空高くに連れていくような残酷な愉しみがあった。
 平行して下半身にも悦びを与えてやるのをマリアは忘れない。
口を支点に双つの尻に圧力を加えた。
「んふっ、んっ、んんっ」
 的確にもたらされる快感に、葵の鼻息が荒くなる。
混乱していてどこが快感の源となっているのか、判断がつかない状態だろう葵を、
マリアは甘い抱擁でさらに深い混濁の沼に誘いこんでいく。
「ん、んっ、んぅぅ……」
 年頃の少女が認めるにはあまりに恥ずかしい部位の快感から逃れようと、葵が尻を揺する。
マリアは好きなようにさせながらも、もちろん腕の中から逃したりはせず、
葵の動きを逆手にとって快楽を植えつけた。
 口から絶えず流しこまれる快感と、身じろぎするたびに下半身に広がる快感。
教室内で女教師に抱きしめられるという衝撃は、理性豊かな葵の判断力を消失させ、
葵は身体を苛む二つの刺激のどちらに対応すべきか決めかねていた。
その隙に、マリアという名の衣をまとった欲望が、老練な蛇のように忍びこむ。
「んんっ……!」
 マリアの足が、足の間に割って入ってくる。
内腿に冷たい感触を受けて、葵は身を竦ませた。
「うぅ……んふ、ぅ……」
 冷たさが足に広がっていく。
もう風は肌を切る冷たさの季節なのに、マリアがもたらす冷たさはなぜか心地よくて、葵は戸惑う。
それは、マリアの左足がさらに足の内側に入ってきて、身体の下端に触れたときに一層強まった。
「あ……あ、せん、せい……!」
「フフッ、優等生の美里サンも女なのね……こんなに濡らして、悪い子」
 その一言がもたらした効果は劇的だった。
「ご、ごめんなさい、私、ごめんなさい……!」
 葵は狼狽し、豊かな黒髪を鬼女のように振り乱す。
「いいのよ」
 そんな葵のマリアは肩を抱き、優しくくちづけた。
冷気が葵の興奮を冷まし、代わりに陶酔をもたらす。
同性からも憧れの的である女教師を独り占めしているという喜びは、
薔薇の香りに乗って体内へと浸透した。
「ああ……先生、私、恥ずかしい……」
 葵はいやいやをするように首を振り、マリアの胸に顔を埋める。
すると、豊かな胸の谷間からも、ほんのわずか異なる種類の微香が漂ってきた。
大人の女性はこんなところにまで気を使っているのかと、葵は驚き、感動した。
「その匂いを嗅いだ子は、美里サン、アナタが初めてよ」
「え……あ……っ……」
 気づかれるほど嗅いでいただろうかと赤面する葵に、マリアは彼女の耳の後ろで囁いた。
「もっと……嗅いでもいいのよ」
 意図を図りかねて、葵は顔を上げた。
左右に伸びた紅い唇の端が、妖艶にほころんでいた。
そして足の間をさする彼女の指の動きで、葵は理解した。
異常な――少なくとも通常ではないことをしようとしている。
これまで悪い誘いや怠惰な脇道に逸れることなく、両親の期待に応えてまっすぐ正道を歩んできた葵に
とって、尊敬する担任の服を脱がせるというのは、まったく思考の範囲外にあることだった。
性的な事柄を知らないわけではなかったけれども、それはあくまでも愛しあう男女が行うものであって、
未だ愛する異性を持たない葵は、縁遠いものだと思っていたのだ。
そして今日唐突に経験した、マリアとのくちづけや身体に触れられたのとも意味合いがまた異なる。
キスに自分から応じたのも、口の中で誰にも見られてはいないという言い訳が一応成り立つ。
しかし、教室内でマリアの服を脱がせるという行為は、言い訳の仕様がない禁忌だった。
遅い時間とはいえ、誰かが廊下を通れば見つかってしまう。
万が一にも目撃されれば、大変なスキャンダルとなって校内を吹き抜け、
マリアも葵もこれまで築いてきた全てを学校に居続けるのは難しくなるだろう。
仮にマリアとの行為がやめられないとしても、何も校内でする必要などないのだ。
 それらの理性は、だが、霧となって散っていく。
鼻腔をくすぐる薔薇の香りが、下半身の敏感な部分に絶えず与えられる刺激が、
これまで培ってきた良識にひびを生じさせていた。
マリアの豊かなバストは、レザー越しであっても得も言われぬ質感に満ちている、
直に触れればもっとたまらないのだろうという誘惑は、抗うには甘美すぎた。
 逡巡の末葵は、マリアの黒いビスチェの中央で輝く、金色のファスナーに指を伸ばす。
葵の決断を称えるようにファスナーはなめらかに、マリアの身体の中心へと落ちていった。
衣服に包まれていてさえその大きさは女子生徒に羨望を、男子生徒に欲望を与えずにおかなかった乳房は、
拘束から解き放たれるとさらにボリュームを増した。
 葵も同級生と較べると際だったスタイルの良さだが、マリアには敵わない。
支えを失ってもまだ左右の乳房同士が触れあっているほどの巨大なバストに、
葵はたまらずため息をついた。
「フフッ、くすぐったいわ」
「す、すみません」
「謝ることはないのよ。それより……どうかしら、私の胸は?」
 これほど答えに困る質問もなく、尊敬する教師の胸の谷間を凝視しながら、葵は返答に窮する。
マリアは尻を撫でていた手を止めて、葵の右手に重ねた。
「あ……」
「どうしてかしら、触って欲しいと思うだなんて」
 マリアの手が彼女自身の乳房へと滑っていく。
彼女の手に引かれるまま、葵はマリアの丘の麓に触れた。
 彼女の他の部分と同じく、温かさは感じない。
冷たさはしかし心地よさに置き換えられて、葵は豊かな丘の下側に手を動かした。
「あぁ……美里サンの指、とても気持ちいいわ」
 葵はもちろん愛撫するような手つきはしておらず、ただ撫でたにすぎない。
けれどもマリアの悩ましげな吐息は、葵の動悸を速くし、さらに奥へと手を進ませる。
「もっと、指だけじゃなく、掌で……ああ、そうよ、上手ね美里サン」
 マリアが望んでいるから。
請われるまま葵は、マリアの乳房を愛撫した。
下側から重みのある肉を持ちあげ、手首を返して丘の頂を掌で包みこむ。
乳房が揺れるたびに漂う香りが羞恥心を忘れさせ、大人の女の熟れた果実を貪らせた。
「先生の……む、胸……とても肌触りが良くて、大きくて……素敵、です……」
「ありがとう……嬉しいわ」
 微笑むマリアに葵は自分から唇を差しだした。
望んだとおりの、望んだ以上のキスに、心がとろける。
マリアの乳房を掴んだ手は徐々に、意図のある動きへと変わっていた。
「ふっ……ン……」
 マリアの軽い鼻息が、葵の背筋をぞくりとさせる。
美しい英語の発音で生徒を魅了する声は、悩ましさにおいても他者を魅了せずにおかなかった。
 心臓が喉までせりあがったかのように、口の中で鼓動がする。
それでも甘い唇を離したくなくて、葵は積極的に舌を絡ませた。
「ん……んッ……」
 口の中で、それから外で。
もつれ、交わる舌は一瞬たりとも離れようとせず、
交尾する軟体動物のように激しくうねりながらお互いの口腔を行き来する。
泡立った唾液が舌を包み、マリアがそれを削ぎとって葵の舌の上に乗せた。
冷たい舌に導かれて嚥下した葵は、腹に熱い塊が落ちていくのを感じた。
「は……あぁ……」
 息が続かなくなって、仕方なく葵は口を離す。
呼吸を整え、すぐにくちづけをしようとして、掌に触れる乳房に変化が生じているのに気がついた。
「あ……」
 熟した桃よりも柔らかな乳房の一点に、硬くしこりができていた。
それは女性なら当然知っている変化ではあったが、実際に触れるのは初めてで、葵は驚いてマリアを見た。
「どうしたの、美里サン? フフッ、吸ってみたくなったのかしら?」
「い、いえ、あのっ、私」
 吸う、という一語に葵は激しく動揺した。
それはまだマリアの味も色濃く残っている口唇を連想させ、思わず唾を呑んでしまう。
ひどく大きく響いた音に、いたたまれなくなって乳房から手を離そうとすると、
マリアに優しく押しとどめられた。
手を掴まれたわけではない。
言葉で制されたわけでもない。
ただ彼女の、光を一身に集めて水底を照らす蒼氷の瞳に見つめられただけで、
葵は指の間で収穫の時を待っているような柔突起を口に含む、そのことしか頭になくなっていた。
「……」
 いつの間にかマリアの乳房が表に出ている。
自分が取り出してしまったのか、それとも偶然に服からまろび出たのか、葵には判断がつかなかった。
 今は葵の手が、いくらかはこぼれ出ているとはいえ乳房を隠している状態だ。
吸うとなれば手をどかさなければならず、そうすれば、夕陽の下に美しいバストの全貌を晒すことになる。
教室内で敬愛する教師の裸身を見ることに、葵は息苦しさすら覚えた。
掌が汗ばみ、より乳房の質感を捉える。
握ればそのまま潰せてしまいそうなくらい柔らかな果肉の表面はどこまでも滑らかで、
異なるのは乳首とその周りだけだ。
美しさもスタイルも女性の理想型とすらいえるマリアの、その部分はどうなっているのだろうか。
ひとたび湧いた疑問はもう拭うことなどできない。
葵は息を止め、マリアとは目を合わせずに、ケーキの型を外すように垂直に手をどかした。
 肌の色に近いほどの薄いピンクの乳輪は、葵が想像していたのよりは大きかった。
だが、想像と異なったのはそれだけで、丘の頂上に施された化粧と、頂に乗る、
丘の大きさからすれば小さな乳首の美しさは想像に違わない。
ごくわずかに前傾姿勢をとるマリアの乳房は重力に従って重たげに垂れる。
それでも形はほとんど変わらず、芸術的な趣さえあった。
 目にしたときから魅入られていた葵は、夢遊病者のように乳房に唇を寄せる。
挟みこめるよう唇を突き出し、夕陽が照らす部分も少なくなりつつある丘陵の突端を咥えた。
「……っ……!」
 触れた瞬間、快楽が流れこむ。
有り体に言えば皮膚の一部でしかないのに、それ自体が快感を与える成分でできているかのようだった。
息を呑んだ葵は、その息を吹きかけてしまわないよう呼吸を止めて、薄く唇を開けた。
口の中に入ってきた乳頭を、どのように扱っていいかわからず、唇で挟んだまま動きが止まる。
だが、咥えているうち、原初の記憶めいた衝動に駆られて、ゆっくりと吸いあげた。
「あァ……!」
 マリアの恍惚に勇気づけられ、もう一度吸う。
今度は喘ぎ声は聞こえてこなかったが、乳房を上下動させる深い呼吸が彼女の官能を示していた。
それは、紛れもなく自分がもたらしているものだ。
吸う前は一度だけ、などと自制しようとしていた欲望は真夏の入道雲のように膨れ、
葵は幾度となく乳首を吸いたてた。
「あッ……ンン……」
 教壇で英語を教えている時よりも一オクターブ低い喘ぎは、葵の劣情をかきたてる。
吐きだされる熱い息が肌に触れると、灼かれているかのような錯覚に囚われ、
何も考えられなくなってしまうのだ。
 吸うだけで全体が弾む、柔らかな膨らみ。
口だけでは物足りなくなって、葵は空いている左手をマリアのもう片方の乳房に伸ばした。
「フフ……欲張りね、美里サンは」
 口とは裏腹に、マリアは愛おしむように葵の頭を撫でる。
すっかり陶酔した葵は音がするまで唇を動かした。
 かがんだ姿勢で胸を吸い続ける葵を、マリアは机の上に座らせた。
座る際に乳首から口を離した、そのいっときだけ葵は我に返ったが、
マリアが乳房を与えてやるとすぐに口に含んだ。
「いい子ね、美里サン」
 粘度の高い囁きを、夕暮れにさえ聞かせまいとするかのように垂らす。
少女を虜にする蜜を、マリアは少女の肌に擦りこんでいった。
耳朶から、首筋へ。
美しい黒髪が隠すうなじに手を入れ、撫でる。
ある時期の少女しか持ちえない滑らかさに感服し、指をねっとりと這わせた。
「んん……ん……」
 息を弾ませながらも口を離さない葵に微笑を浮かべ、今度はストッキングの上から太股を撫でまわした。
一流のバレリーナのような動きで左右の太股を行き来させつつ、巧みに足を開かせていく。
 本当を言えば、葵はもう立っていられなかった。
膝から下がなくなってしまったかのように頼りなく、マリアにしがみついていなければ、
今すぐにでも尻もちをついてしまうだろう。
「あぁ、あぁ……先……生……っ」
 葵はマリアにしがみつく。
掴んでいるものの正体を知らぬまま、母親の温もりを手放すまいとする赤子のように。
 葵を抱きすくめたマリアは、葵の抵抗が少ないのを確かめると、より大胆に愛撫を施しはじめた。
長い指を自在に操り、葵のまだ、自分自身ですらほとんど触れたことがない溝を撫でる。
ゆるやかな前後の動きが、一往復ごとに少女から力を奪い、彼女を喪わせていく。
立ちこめる体香を嗅ぎながらマリアは、教壇の上では決してみせることのない笑みを浮かべていた。
「フフッ……可愛いわね、美里サン」
 マリアの囁きが粘度を伴って耳道から落ちていく。
形などないはずのそれが、細い管を通って葵の心臓に染みると、
燃料を注がれたかのように鼓動が激しくなった。
そして足の間でさまようマリアの手は、落ちてくるものを受けとめるようにひそやかな裂け目を覆い、
催促するように指先が熱く腫れた肉唇を刺激した。
「ん……ぁ、あぁ……だ、めっ……」
 せりあがってくるものに抗う術すら知らず、葵は翻弄される。
もう夜の寒さを憂う季節であるのに、下腹からもたらされる熱は、熾火のように身体を火照らせ、
薪をかき混ぜるように蠢くマリアの指は、それが触れた場所だけを快く冷ます。
すっかり股間に潜りこんだ細長い鈎が、ほんの数ミリ動くだけで、
葵はここが学校であることも忘れて悩ましい吐息を漏らしてしまうのだ。
「あぁぁ……先生、私……怖い……です……身体が、変に……」
 葵の言葉に偽りはない。
自分に何が起こったのか、思考ははっきりと解らないながらも、肉体は把握している。
マリアがもたらす快楽が細胞を燃やし、その悦びに打ち震えているのだ。
「怖がることはないわ」
 視界に映る蒼い闇が、本当なら慎み深く怖れ、経験するはずのものから、
春の訪れに怯えつつも咲く雪割りの花のように、怖れだけを取り除いていく。
それは実は、取り除いたのではなく、甘美な闇で包み隠されただけにすぎない。
しかし、葵にそれを区別することなどできず、また、仮にできたとしても抗うことはできなかっただろう。
それほどマリアが誘う禁断の誘惑は、これまで闇に触れもしなかった少女にとって、
劇薬に等しい効果をもたらしていた。
「さァ……訪れるものに従いなさい。身も心も、委ねてしまいなさい」
 下着の上からマリアは、葵の最も敏感な部分を掻く。
すでに充分すぎるほどほぐされていた官能は、一気に初めての高みへと葵を押しやった。
「あぁ、せん、せ……っ……!!」
 稲妻のような快楽が足の間から頭の先に走り抜ける。
自慰さえ知らなかった少女が初めて身に受けた絶頂は、聖女とさえ称される気品をたやすく吹き飛ばした。
「あ……ッ……」
 鼻腔を膨らませ、体内を満たした快感の、最後のひとかけらを吐きだす。
そうして役目を終えた花弁がしおれるように、ゆっくりとくずおれていった。
 葵の身体をマリアは剥きだしの豊かな胸の間で優しく受けとめる。
その光景自体は絵画の題材に用いられても不思議はないほど美しかったが、
二人を照らすダークオレンジの色彩が、どこか、食虫植物が獲物を捕らえたさまにも見せていた。
 葵を乳房に閉じこめたまま、マリアが囁く。
「これから、ワタシの家にいらっしゃい」
「は……い……」
 葵は朦朧としたまま頷く。
その返事が何を意味するのか知る由もなく、むしろ、そうすることが義務であるかのように、
心地よい柔らかさの乳房に顔を埋めたのだった。



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